君が強いのは、よく知っている。



    言い直そう、強くなければこの世界ではやっていけない。週刊誌などで言われる人と人とのドロドロした確執だとか闇だとか、そんな俗めいた物では無く、上へ登り、横へ見聞を広げ、強固にしがみつき自分を広げる、そんな人間達がひしめき合っているのだ。そんな中身の無い物に振り回されていたら、あっという間に振り落とされる。そんな世界で、飛び回れる軽やかさと自信と背景そして『天使』という完成された舞台で踊る君。
    その世界の殻を破ろうとしている君が、

    ───うん、我儘言っちゃった。

    自分の事を我儘だと言った。
    我儘。小さな笑いが溢れた。
    確かにそうだ、僕らタレント1人を支える為に売る為に、どれほどの人と時間が費やされているか。誰より人の横顔を見る君が、人の目を気にしてきた君が、その事実に何も感じずに破ろうとしているわけでは、無い。

    「好きにさせてくれなかったら スターズを辞めるって?」

    なんてね。こんな言葉は君に対して嫌味にもならない。

    「私は王賀美さんとは違うよ」

    だけど自分から傷付きにいく人間でもない。こんな時、僕は自分の不器用さを思い知る。良心が咎めたのか情けなくなったのか、自分の身体が翳った。目の焦点は合わなくなった。
    トレーニングを終えてからも当たり前のように変装して空港まで見送りに来た君は、なんだかただの幼馴染みで、たまにこの子は空気になる演技でもしているような気に僕はなってしまう。誰も僕らに気付かない。僕も同じく空気になれているのか。高飛びだなんて茶化した言い方をしてくる君は相変わらずだ。小さい君は、ずっと笑った顔のまま。

    「大丈夫だよ、君は誰にも負けはしない」

    言葉にすることの意味。去り際に漸く言えた一言は、幼い頃のアダ名で返ってきた。


    だから君は、強いんだ。
    弱さを出せる場所を知っているから。