「抱き締めても、良いだろうか?」

    何を、言っているのかと、思った私を許して欲しい。
    この間、キスをした。私から。弟へした親愛のキスを思い出してから、それでも彼に触れた一瞬は何が何だか分からなくなってしまったけれども。どうしてもしたくなって、はしたないと思われるのを覚悟の上で、許可を貰ってキスをしたのだ。返ってきた彼の言葉は「……?…口にしても良かったのに」というもので、口に当てられなかったのだと分かってショックを受けて、許可も取らなくていいのに、という言葉に、そうよねと返すしか無くなった。平たい言葉とは逆に頰が熱くてムズムズしてきまったのも思い出す。そう、許可なんて、

    「抱き締めても、良いだろうか?」

    要らないのよ。

    「私は貴方の彼女なのだけど、抱き締められても良いのよね?」変な日本語だわ。
    両腕をアキラ君へと広げると、倒れてくる様な錯覚に陥る程身体を預けてきて、首を傾げて顔を覗き込む様にして、チュ、とキスをした。一瞬だけ目が合った。頭を包み込んで腕いっぱいに、ぎゅう、と抱き締めた。
    彼の体から力が抜けている。その分体重が私にかかったけども、その重みが嬉しかった。

    「…ごめんね」
    「こちらこそごめんなさい、……今、嬉しいわ」
    ふ、と口元を緩めたのが分かった。乗じて髪の毛や耳たぶに触れていると、両の腕で包まれる様に抱き竦められた。

    「……心臓が、破裂しそう」
    「……、僕の心臓は溶けそうだ」

    身動きできない強さに変わり、アキラ君は顔を首のあたりに埋めた。ぼわ、と身体が熱くなったのは、やはり恥ずかしいからかしら。男の人にこういう類の抱擁を受けるのはとてもむず痒くて、キスをした事も今更とても恥ずかしいのだけど、それを伝えたら止めてしまう気がするから耐えようと決めた。初めてだもの、こんなに触れてくれるアキラ君は。

    「身体が凄く…、…熱い、ね?」

    アキラ君ワザとかしら怒っていいかしら。何より今まで聞いたこと無い声な気がしてビックリだわ。

    「アキラ君のせいじゃない……」

    どうしてくれるの。私の声まで何やら変に泣きそうで、腹が立つわ。耳元で「僕のせい?」なんて囁くのはズルイと思うの。
    何がどうズルイのかは分からないけど。





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