幼馴染みの
歳上の男子のアキラに
慰められに行く話(アキラ←千世子
または
アキラ⇆千世子)
「どうしたの」
アキラは敢えて、乾いた声で訊ねた。深夜に来た『今から行って平気かな』という突然の連絡。アキラは、大丈夫だよと返信を返してからまだ彼女の来ていない玄関のキーを解除した。
呆然とした、ボロボロと音が鳴りそうに涙を溢す彼女から、弱く静かに、言われた事があった。───勝手に扉を開けたいの。そうやって入りたいの。
我儘にも思えるその言葉に反して、天使を包む空気はえらく空虚で、それを拒否する理由は、アキラにはとうに無かった。その後約十年経つが、他の人間から似た話は聞いていないのが現状だ。
玄関を事もなく通り過ぎた千世子は、真っ直ぐにアキラの懐に飛び込んだ。
「アキラ、君」
天使の声ではなかった。ただの、
「見られなかったね?」
ただの、二つ下の、何かに耐えるだけの小さな女の子の声に、アキラは応える。指先で顔をさするように撫でると、求めるように手に顔を寄せる千世子。かと思うと見るなというようにアキラの首に腕を回し顔を埋めた。アキラは、千世子の腰に強く手を回す。髪にキスを落とすと、ゆっくり静かに千世子に触れ始めた。千世子の両手は強く握り締められた。
「あっ……ッ」
千世子が身を捩ると、アキラの指先が薄い布越しに敏感な箇所を追い掛ける。そこから音がすると、千世子の熱い息がアキラにかかり、アキラは指先の動きに熱を込める。
「アキラくん…ッ、ァあ、、そ、こ……ッ」
お互いに顔を見せずに、強く抱き締め合いながら、千世子の身体の熱は上がっていく。アキラが千世子の肌を舐めると、指の動かし方を変えると、ダメ、ヤダ、そこやめてヤダとビクビクと跳ねる。泣きそうに逃げる千世子の腰をそのまま強く抱き抑えて、指先で熱く触れ、囁く。
「ホラ」
「ああっ、やぁ、あ…───ッ!」
千世子の身体はキュンと鳴くと、耐え切れずに熱く身体がしなり大きく痙攣した。
「、ア、ァッ、……ッ、……」
手が、腰が、足が、敏感な熱の余韻が走り無防備にピクピクと動いたまま、千世子の身体は脱力した。ぼんやりとした赤い顔も荒い息もそのままに、アキラの腕の中で何も考えずに、生理的な涙を静かに流し、目を閉じた。
「アキラくん、おはよう」
愛らしく綺麗な部屋着を着た千世子は、天使らしい朝の光を全身に満遍なく纏って微笑みキッチンで手を拭くアキラに近付いた。
「おはよう」
「ねぇ、私また」
「朝御飯が簡単なおにぎりでごめんね、ちゃんとお箸使って食べた?」
極力何もさせない配慮なのだろうと、千世子は思っていた。気を遣わせないように自由の効く別室で、作った人が分かるようなおにぎりで、手が汚れないお箸で、そのお箸も使い捨て、そして、これはとても下手なのだけど、何も聞かない言わないよと、アキラは伝えているのだ。当人がどう思うかはともかく、アキラは千世子を見守ってきた少し歳上の男子である。その矜恃は理解できるがそれで納得する千世子ではなく。
「ちょっと久しぶりな分、美味しかったよ。ありがとう」
「どういたしまし」
「ココで昨夜」
「ああ、癇癪起こしてたね」
先手を打ったような言葉をアキラは返した。真っ直ぐと見つめ返してくるスターズの星アキラが、そこには居た。何故かニヤリと口角が上がるのを感じた千世子は、目を合わせたまま、抱きついた。
「アキラくんにだけ治められる、癇癪なんだよ」
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